『負けヒロインが多すぎる!』(雨森たきび)の結末は、1巻のラスト(アニメ3話相当)を踏まえれば、きっとこのようになるであろうと天啓が下りてきたので書き残しておきます。ネタ潰しだったり「考察」を意図したものではないことはご了承下さい。7巻時点に基づいて書くので、アニメ化された3巻よりも後の内容を不可避的に含みます。
なお、このエントリは最終的には「どうなるんだろう。楽しみですね」で締められます。
シリーズの結末を強く示唆する台詞が1巻のラストに書いてありました。
「まずだな。告白に先立って2、3年くらいは友達付き合いが必要だろ。お互いを知りつつ好意を確認し合ってから、思い出の場所とかに呼び出してようやく辿り着くというか」
『負けヒロインが多すぎる!』1巻のhonto版841ページの位置より
この台詞は、1年生の1学期の終わり(7月)に八奈見さんに告白しなかった温水くんの台詞。
1巻の短期的なゴールは、温水くんがこういう恋バナ的な軽い会話ができる友達(八奈見さんら)を作ることだったと私は認識しています。この台詞が発せられた会話は、その短期的なゴールを象徴しているわけですよね。友達のいなかった温水くんが自然に会話できる相手を作り、それを手続き的に確認する、という友達のいなかった男子高校生らしい、明示的な手続きを重視したコミュニケーション。
そしてまた、この台詞は、シリーズ全体を通した長期的なゴールを強く示唆しています。この台詞は、以下の3つの手続きに分解することができます。
- 「告白に先立って、2、3年くらいは友達付き合い」
- 「お互いを知りつつ好意を確認し合ってから」
- 「思い出の場所とかに呼び出してようやく辿り着く」
言い換えると、温水くんが理想としている告白とは、この台詞の1~3の手続きから成り立っています。つまり『ときめきメモリアル』の「伝説の樹」の下での告白ですよね。素直に読むと、作者は以下のようにシリーズを進めると宣言しているわけです。
- シリーズを通して2、3年くらい友達付き合いをしてから
- シリーズの後半では好意を確認し合ってから
- 最終的には思い出の場所(=階段)に呼び出して、告白。
そういう結末であろうと思われます。
そして、フィクションとは一般的に容易に想像される結末からヒネってくるものであることを前提として考えていくと、『負けヒロインが多すぎる!』の結末とは、究極的には、温水くんと八奈見さんの二人が、温水くんが理想としている告白の明示的な手続きに乗るか、それとも乗らないのかの話だと私は考えています。
温水くん自身のあり方は1巻と比較して徐々に変化しておりこの手続きが今でも有効なのかは明らかではないところではありますが、順調に「友達付き合い」と「お互いを知りつつ」が進んでいると言えます。これから巻が「2、3年くらい」進むにつれてより明確に「好意を確認し合」うことが予想されます。
一方の八奈見さん。八奈見さんもこの会話を記憶していると想像されます。期限は「2、3年」と明示されている中、7巻では1年が過ぎております。引き算すると、あと1、2年は温水くんとの「友達付き合い」のユルい関係を維持できる可能性が高い。まあ、先延ばしとも言いますね。ただ、期限も場所も温水くんによって宣言されているんですよね。
この手続きに乗るにせよ、乗らないにせよ、全く無視して結末を迎えることはないでしょう。
他方で、この「2、3年の友達付き合い」自体は、先延ばし(=待ち)のスタンスであって、まさに『負けヒロインが多すぎる!』の「負けヒロイン」たる幼馴染み・八奈見杏菜さんが負けた理由そのものなんですよね。また、温水くんも八奈見さん始め他の文芸部ガールズが待ちのスタンスから負けたことを知っているわけです。
そうすると、二人ともこの手続きには、こと期限の面において乗らないのではないか。そう予想されます。
また、告白の手続きそれ自体、つまり、男女が交際に至るために、そうであると明示されたデートを行い、そうであると明示された告白を行い、という明示的な手続き自体が無効化されていくことも想像されます。
以下、5巻の豊川稲荷デートでの会話から、八奈見さんの男女交際に関する考え方を見てみましょう。
「あのね、デートってそんな構えるものじゃないの。温水君、全然分かってないなー」
(中略)
「じゃあデートってどんなものなんだ」
「簡単だよ。男女が同じ時間を過ごして同じものを見て。どう感じるかどう思うか。それをお互いに確認するのがデートだよ」
(中略)
「ただ一緒に歩くだけでも(中略)相手と合う合わないが分かるんだって」
『負けヒロインが多すぎる!』5巻のhonto版127ページの位置より
八奈見さんは、明示的な手続きを踏まえた男女交際は違うと思う、と端的に語っていますね。いい意味でハイカーストな女子高生らしいスタンスですよね。
そうすると、八奈見さんは、温水君が宣言した明示的な手続きそれ自体に乗らないのではないか。そうも予想されます。ただ、彼女のスタンスは、上述の先延ばし(=待ち)のスタンスでもあるんですよね。
待ちのスタンスのままで行くと、八奈見杏菜さんはまた負けるわけです。
以上を踏まえると、温水くんと八奈見さんの二人は、温水くんが理想としている告白の明示的な手続きに全乗っかりはしないだろうけれど、そこから全降りもしないでしょう。
うーん、何も言ってないな。
どうなるんだろう。楽しみですね。
