0.序文:すべては損切りから始まる。

みなさんは、株を買うときに何を考えて買いますか?

カタリストですか? 優れたファンダメンタルズですか? 美しいチャートですか?

私はどれでもありません。

私のトレードは「このトレードで10万円1を失ってもいいか?」と自分に問いかけることから始まります。

私のトレードは損切りから始まります。

1.私は誰か?

私自身について。

私はコロナ禍の2021年から投資を始めた兼業トレーダーです。歴、メチャ浅い。ただ、兼業なりに試行錯誤したのでこの記事で紹介していきます。なぜなら、このブログは私のブログなので。

さて、2025年に入ってからの自認は「投資家」よりもむしろ「トレーダー」。トレーディングスタイルは、徹底したトレンドフォローのテクニカル派。テクニカル:ファンダは8:2の気持ち。この記事でも、株を買ったり売ったりを「投資」ではなく「トレード」と呼びます。

私は2023年にトレンドフォローの手法「新高値投資2」を知り、それ以来、トレンドフォローの手法を洗練させることだけを考えてきました。その過程で、いわゆる「新高値投資」や「新高値ブレイク」とは決別しました。

2024年にトレンドフォローの雄であるアメリカ人トレーダー、マーク・ミネルヴィニの著書に感銘を受けたことをきっかけに、ウィリアム・オニール、ラリー・ウィリアムズ、タートルズのカーティス・フェイスのトレンドフォローに関する本を読み漁り、トレンドフォローについて思索を深め、日本市場で実践しています。

2025年9月現在の私のトレーディングスタイルをこうしてブログ記事として言語化し、自分のスタイルの整理をするとともに、読者の皆さんからの刺激を得られたらと考えています。それがこの記事を書いた理由です。

私の失敗について。

トレードを始めた2021年、私は「なんとなく」で買った株がいい感じに上がるのを見て喜び、手を叩き……、2022年の年明けに「その日」がやってきました。

ずっとアツかった半導体が、いま「割安」だ!(SNSの声)

SNSでのウワサに飛びつき、資金のうち「かなりの額」を半導体関連企業の株価に連動して動く指数:SOXL3に注ぎ込みました(チャートの左側の⬅)。

SOXL

まだ下がる! また割安!! ナンピン!!! まだ下がる! また割安!! ナンピン!!! ウオー!!!!!!!!

結果はご覧の通り。

2024年の春前(チャートの右側の➡)になんとか手放すまで2年もの間、私の資金のうち「かなりの額」は塩漬け。相当な機会損失を被りました。

資金が目減りしている間、私は一つの問いについて考えることになりました。

「安く買ったら、いつ売ればいいんだ?」(私)

バリュー投資の王であるウォーレン・バフェットに訊いたとしても、その答えは返ってこないでしょう。

「最も好きな保有期間は永遠である。」(ウォーレン・バフェット)

日本人投資家はバフェットのことが大好きですが、私は大嫌いです4。なぜなら、私が一番困っている時に答えをくれなかったから。

2022年の私は散々でした。「かなりの額」が塩漬けになっていたせいでトレードはできず、買ってから1/4まで落ちたSOXLを手放すこともできず……。まったくトレードできない一年でした。

2023年に入って資金が増え、再起を賭けて様々な本を読む中で出会ったのがトレンドフォローでした。

「高値で買って、さらに高値で売る。」(トレンドフォロワー)

2022年の私への答えはそこにありました。

2.この記事の想定読者について

この記事の想定読者は、

  • バリュートラップに引っかかった兼業投資家
  • 日本市場でトレードするトレンドフォロワー

兼業投資家のうち「割安」「バリュートラップ」に引っかかってる方に「こういう方法もあるんだよ!!!」って紹介したい。

トレンドフォロワーのための本って、多くはアメリカで出版されたアメリカ市場向けの本5じゃないですか? でも、私たちの多くって日本市場でトレードをするわけで、そこにはアメリカ市場のための手法とのギャップがある。そのギャップをこの記事で埋めたい。せめて、ヒントを提供したい。

願わくば、この記事があなたの一助になることを。

3.すべては損切りから始まる。

人は誰しも「損」をしたくない。

では「損」とは?

  1. 含み損は「損」か?
    2022年の私:損ではない。
    2025年の私:損である。
  2. 機会損失は「損」か?
    2022年の私:損ではない。
    2025年の私:損である。
  3. 確定損は「損」か?
    2022年の私:損である。
    2025年の私:受け入れるべき「必要経費」である。

日本の兼業投資家の多くは、含み損を損だと捉えません。その含み損が確定して初めて損が確定する、と考えがちです。

私は「含み損≠損」という考え方を決して受け入れません。含み損が戻らないリスク、含み損が膨らむことへの不安・精神的コスト、なにより、その資金で本来得られたハズの機会を失うことのコスト……。

行動経済学には「損失回避性」という概念があります。これは、損失を回避することを利益を獲得することよりも評価してしまうという人間の心理です。これって、含み損を確定損へと確定させない心理なんですよね。

私のトレード戦略は、損切りを受け入れるところから始まります。

下表はトレードの本ではあるあるの表ですが、「トントン」に戻すために必要なリターンは、確定損が大きくなればなるほど大きな額が必要です。

確定損へと確定させた損失割合「トントン」に戻すために必要なリターン
4%4%
5%5%
6%6%
10%11%
15%18%
20%25%
25%33%
50%100%

失った50%を取り戻すためには、残りの50%から100%のリターンを得なければいけない。要するに、ダブルバガーを狙う必要がある。

ダブルバガー、狙えますか?

私は、ダブルバガーを狙えない。

ダブルバガーを狙えないならどうするか?

そう、ダブルバガーを狙うまで追い込まれる前に、損失を確定させる。撤退する。

損切り=撤退ラインを決めるところから私のトレードは始まる。

では、いくらなら失えるか?

一般的に「トレード資金全体の1~2%が1回のトレードで許容できる損失」とされています。私は保守的なトレードを好むので、トレード資金全体の1%を許容できる損失としています。これを踏まえてちょっと計算してみましょう。

1回のトレードでの損切り許容ラインを5%とするならば、1回のトレードで使える資金は全体の20%となります。4%ならば、25%。そうすると、原理的に、そもそも3~5銘柄しか保有できないことになります6

損切りで失える額が決まると1回のトレードの資金が決まり、1回のトレードの資金が決まると保有できる銘柄の数が決まる。

すべては損切りから始まる、とはまさにこの意味です。

3.損切りの次に利益がある。

わかった。じゃあ、利益はどうするんだ?

Trend is Friend.(トレンドフォロワー)

利益は伸ばせるだけ伸ばせ、がトレンドフォローの教科書的な答えですが、ちょっと計算してみましょう。

勝率50%、1トレード当たりの利益率9%、損切り許容ライン4.5%のトレードを月に4回行った場合を例に取ってみましょう。この場合は、年間でのリターン13%になります。机上の空論と言えど、結構なリターンだと思いませんか?

資金リターン1銘柄当たりの資金の割合総トレード数勝ちトレード数勝率1トレードに期待する利益率負けトレード数損切り許容ライン月当たりの損益
1月1001.8%20%4250%9%24.5%1.8
2月1012.8%20%4250%9%24.5%1.818
3月1023.8%20%4250%9%24.5%1.836
4月1034.9%20%4250%9%24.5%1.854
5月1045.9%20%4250%9%24.5%1.872
6月1056.9%20%4250%9%24.5%1.89
7月1067.9%20%4250%9%24.5%1.908
8月1078.9%20%4250%9%24.5%1.926
9月1089.9%20%4250%9%24.5%1.944
10月10911.0%20%4250%9%24.5%1.962
11月11012.0%20%4250%9%24.5%1.98
12月11113.0%20%4250%9%24.5%1.998

ご自身のこれまでの勝率・利益率をご自身で計算し、仮に厳格に損切りをしていたらどれくらいのリターンが得られたかまで計算してみると、損切りが悪くないものだと分かると思います。

4.損失・利益の計算の次に方法論がある。

合い言葉は「VCP」

ここまで長らく計算にお付き合いありがとうございました。ここからがこの記事の「私らしさ」です。

私の方法論は、VCPに基づく銘柄選択の徹底です。これを日本市場に特化させたことに私の方法論のエッジ(優位性)があると信じています。

VCPとは、大口投資家(以下、スマートマネー7)による買い集めによって生じる典型的なチャートパターンです。VCP:Volatility Contraction Patternは、日本語だと「ボラティリティ収縮パターン」。その名の通り、ある銘柄のボラティリティ(値動き・出来高)の収縮・拡大のプロセスを示すパターン。アメリカ人トレーダーのマーク・ミネルヴィニが体系化したテクニカルトレードのための手法です。

私のバイブルである『ミネルヴィニの成長株投資法』(マーク・ミネルヴィニ)から2枚の図を引用するとともに、2025年の春~夏にVCPを示した典型的な銘柄をいくつか紹介します。

VCPの概念図(『ミネルヴィニの成長株投資法』(マーク・ミネルヴィニ)より引用)
VCPが発生する原理(『ミネルヴィニの成長株投資法』(マーク・ミネルヴィニ)より引用)

概念図だけ見せられても正直「なんのこっちゃ」って感じですよね?

以下に2枚のチャートを用いて実例を示します。

1枚目は、ダイフク(6383)の2025年2月~8月のチャート。2枚目は、同じくダイフクの3月~9月のチャートです。

ダイフクの2025年3~8月

オレンジ色の破線がダイフクが2025年3~8月に示した高値です。ここで注目して欲しいのは、高値から安値までの差分を示すA、B、Cが時間経過とともに小さくなっていること。このA>B>Cの動きが「ボラティリティの収縮」を意味します。

では、これがどうなったか。

ダイフクの2025年8月以降

2025年8月の決算で窓を開けて上昇し、その後も上昇し続けています(以降、VCPを示した後に窓を開けることを「ブレイク」と呼びます)。

1銘柄だけだと信じられない?

私はVCPを形成している銘柄をひたすらウォッチしていますので、この夏にブレイクした銘柄はまだまだあります。

INPEXの2025年3~9月(8月上旬のブレイクに注目)
GSユアサの2025年3~9月(8月上旬のブレイクに注目)
荏原製作所の2025年3~9月(6月下旬・8月中旬のブレイクに注目)

これくらいでいいでしょう。もちろん、ブレイクに失敗した銘柄もあります。

IMVの2025年3~9月(8月下旬の下落に注目)

実例はこれくらいでいいでしょう。

VCPには、2つのエッジがあると信じています。

5.鬼と奴隷になれ。

再現性の鬼になれ。

VCPは、スマートマネーの買い集めによって形成されます。したがって、原理的には市場にスマートマネーが存在する限りは常に形成され続けます。そして、市場からスマートマネーが消えることは決してありません。

つまり、VCPは再現性のあるパターンです。

このパターン=スマートマネーの買い集めを愚直に追い続ける手法には再現性があり、再現性のある手法にはエッジがあります。

規律の奴隷になれ。

再現性のある手法を愚直に追い続ける手法を方法論として確立できると、規律を持ったトレードが可能となります。一言で言えば、ニュース・噂に惑わされなくなります。大事なのは、そのニュース・噂を「私が」どう感じたか、ではなく、「スマートマネーが」どう感じたか。東証の取引代金のうち約60~70%がスマートマネーによるものだと言われています。スマートマネー=市場、と言っても過言ではない。

我を捨て、市場に規律を持って素直に従う。この規律にはエッジがあります。

6.アメリカ市場の手法を日本市場に適用する挑戦。

アメリカ生まれのVCPは日本ではちょっと様子が違うらしい?

VCPはあくまでアメリカ人トレーダーがアメリカ市場向けに体系化した手法です。したがって、日本市場では異なる様相を呈するようです。

日本市場とアメリカ市場の大きな違いには、信用取引制度の違いが挙げられます。貸借期間がアメリカ市場では無制限であるのに対し、日本では6ヶ月。対象銘柄はアメリカ市場では全上場銘柄、日本では一部のみ。貸株料は日本では変動制、アメリカでは証券会社ごと……。信用取引制度だけでも数え上げればキリがありません。

私が考える最もクリティカルな違いは、信用取引制度の貸借期間の違いです。

アメリカでは貸借期間が無制限であるためにその時の需給のみに応じて取引が行われる一方で、日本では6ヶ月の制限があるために「建玉を継続するか否か」の判断が6ヶ月ごとに行われます。このため、ある銘柄で大量の信用買いポジションが6ヶ月前のほぼ同時期に構築された場合には、その返済期限が近付くと市場とは無関係の大量の売り圧力が生じます。これにより、VCPが不明瞭になります。

貸借期間の制限によってVCPが不明瞭になることの代わりに、メリットもあると感じています。VCPの形成期間を6ヶ月と想定しやすいことです。直近6ヶ月以内の市場は6ヶ月以内の市場しか示せないため、VCPの形成期間を無制限に広く取ることができない=想定しなくてもよい。有限の分析時間しか持たない兼業トレーダーにとって、これほど都合のいいことはないように感じています。私は1日当たり20分ほどで100銘柄近くのチャートをチェックしています。

また、単元株の大きさの違いもクリティカルな違いの一つだと感じています。端的に、日本では売買最低代金が大きいがために、銘柄当たりの取引回数は少なくなり、VCPを形成できる銘柄が限られるということです。VCPが形成される原理には、スマートマネーによる買い集めがありましたよね? 取引回数が少ないと買い集めの痕跡(ボラティリティの収縮)が見えづらくなり、結果としてVCPを確認できなくなります。私の感覚だと、売買代金が3億円以上でようやくVCPが見える印象です。

7.記録は語る。

まずはノートに記録する。

ここまで、自身のトレードの記録(勝率、リターン、回数……)を把握していることを前提に記事を書いてきました。記録をノートに書き出して下さい。そして、これからもノートに書き出し続けて下さい。自ずと「自分が不安を感じないで損切り・利食いをできるライン」が感じられるようになります。そのラインを守ってトレードを行う。

まず数字を見る。続いて再現性・規律を得る。最後に方法論。

ispaceのトレードから得た学び
「スッキリ」する銘柄数

それから、得意なパターンを監視する。

上述の通り、私はVCPを形成しつつある銘柄・ブレイクした銘柄を毎日ウォッチしています。これらの銘柄を抽出するためのシステムを組んでいます。毎日の全銘柄のOHLCVをデータベース化し、データベースから数式化したVCPに適合する銘柄を抽出し、抽出した銘柄を目視でウォッチしています。1日当たり20分ほどで100銘柄近くのチャート。

私の仕組みの一端

8.まとめ

ここまで、トレンドフォローとVCPの魅力を語ってきましたが、あなたがトレンドフォローにこだわる必要はありません。というか、方法論は何でも良い。その何でも良い手法が数字と再現性と規律に基づいていればそれでよい。

私の場合、すべては損切りから始まった。

9.私が信じていないことリスト

安値買い・ナンピン

私は機会損失を恐れる。

分散投資

私は管理できる数の銘柄しか持たない。

「成長株投資」という言葉

私は企業がどう成長するかよりも市場がどう評価するかを信じる。

RSIを含むすべてのオシレーター

私はむしろ過熱を追う。

52週新高値

私はもっと速くなりたい。

(おわり)


  1. リアルな痛みを伴う額としての「10万円」なので、各人で置き換えて考えて下さい。 ↩︎

  2. 『伝説のファンドマネージャーが教える株の公式』(林則行) ↩︎

  3. Direxionデイリー半導体株ブル3倍ETF。要するに、半導体関連企業の指数 ↩︎

  4. バフェットが株を永遠に保有できるのはバークシャー・ハサウェイの保険事業が尽きることのないキャッシュを生み出すからであって、さらに言えば、それでレバレッジを掛けられるからであって、もっと言えば、既にバフェット自身がバリューを生む存在になっているせいで株価に対して正のフィードバックを掛けられるからであって……。 ↩︎

  5. 日本だと「新高値ブレイク投資塾」のDUKE。が日本向けに噛み砕いていますが、私は正直、氏の著書には不満を覚えています。「成長株投資」を私は信じていないので。 ↩︎

  6. 損切り許容ライン・銘柄数の検証のために、2015~2025年の10年間の日本市場のデータを用いてバックテストしてみました。結果、4銘柄と5銘柄との間に顕著な差は出ませんでした。 ↩︎

  7. スマートマネーコンセプト(通称、SMC)という手法がある。チャートに表れたスマートマネーの動きを精緻に追うための手法である。目下、勉強中。 ↩︎